( 昭和11年 旧制大阪商科大学予科 柔道部逍遥歌 )
芦田英三 作詞
1.
あえかに若き魂太鼓
あきつの島に鼕鳴れば
金星映ゆる欄干に
人生意気に感じては
身を鴻毛に比しぬべき
益良武夫の団欒かな
2.
七つの丘は崩るとも
星座懸れる橄欖は
若やぐ胸を武に籠めて
チベルに文化 創りたる
ローマの児らの勲功ぞ
吾等 三年の誓いかな
3.
北ゆ南ゆ集い来し
健児三百 澪標
白線二条 花薫る
疾風怒濤 茅渟の海
美酒汲める須臾の間も
真理の道を思索うかな
4.
西に東に遠征の
臥薪の日々を重ねたる
白雲尽くるその果に
先人の教え きらめけば
嘗胆の苦 滲みたる
白き戎衣に矜りあり
5.
さあれ はかなき青春よ
詩書携えて柔の道
成敗 誰か論ずべき
乾坤一擲指呼すれば
実りもたわわ 今日にして
凱歌 撼がす大阪城
出典: 『日本寮歌集』(日本寮歌振興会 編、1992年版)などを参考にしています。
なお、漢字表記・振り仮名は現代のものに改めてあります。
作詞者 芦田英三氏は当時の柔道部員で、昭和16年 [1941年] 後期商大卒業。昭和62年 [1987年] 死去。ですから、詞の著作権はまだ存続していると考えられます。ただし、JASRACの管理楽曲ではありません。 抗議・ご意見はこちらへ。
なお、曲の方の作者は不明です。当時一般に知られていた曲に歌詞を付けたとも考えられます。
"あきつの島" - 日本の美称。
"鼕(とう)" - 鼓の鳴る音。「鼕鳴る」のここでの主語は、「魂太鼓」。
"鴻毛(こうもう)" - 大きな鳥の羽毛。非常に軽いもののたとえです。
"橄欖(かんらん)" - オリーブ。本来は別の植物ですが、西洋の文脈での 「橄欖」 はオリーブです。
"チベル" - ローマの川の名前。現在のテベレ川。
"澪標(みおつくし)" - 大阪市章。旧制大阪商大の校章に取り入れられていました。 後身の新制大阪市立大学の校章も、旧制の校章をベースにしたもので、澪標が入っていました。
"茅渟(ちぬ)の海" - 大阪湾の美称。
"須臾(しゅゆ)の間" - ほんのわずかの時間。
"戎衣(じゅうい)" - 戦いの際着る服。戦闘服。「白き戎衣」 は柔道着を指しています。