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行進歌 夕の歌

(成立年不詳。旧制大阪高等商業学校)

村山 元 作詞
弘田龍太郎 作曲


<壱>
理想の海路うみじ はるけくも
今宵生命いのちの内海の
島ふところに舟めぬ
あいに暮れ行く黒潮や
おぼろにかすむ若月わかつき
光は砕く波の
春の浮寝うきね瞬間たまゆら
夢をうつつの想ひかな。

 

<弐>
静かに眠る黒翠こくすい
島根を洗ふ春のしお
そのしおの香に海賊の
歴史のにおひ いちじるく
今もしのぶや和冦わこうの名
八幡菩薩の大旆たいはい
打ち靡かせし八挺櫓はっちょうろ
白き鴎のに騒ぐ。

 

<参>
支那シナ海、印度インド
南洋諸島の嶼々しまじま
男性意志のめいのまま
出没せしは昔か
黒くも浮ぶ嶼々
痛快の墓標はかじるし
ひた寄せきたる紫の
波には名をや流すらむ

<四>
それ咲く花の難波江なにわえ
海国かいこく男児のふところ
日本丸にっぽんまるを先頭に
舟師しゅうし堂々 『茅海ぼうかい』 の
空覆ひたる大旆
豊太閤ほうたいこうが征韓の
雄図ゆうと思へば闇暗しじまにも
若き瞳は輝くか

 

<伍>
暹羅シャム、安南や呂宋ルソン
薫風孕む朱印船しゅいんせん
雄姿見せしは夢なる
堺商人の豪壮
進取の気象 今はた
我等が胸に探るべ
ふと目覚むれば流星
南に飛びて海遙か


出典: 『大阪高商歌集 第一輯』(村山元 著、1921年) より。

なお、漢字表記・振り仮名は現代のものに改めてあります。誤植と思われる箇所は正しました。


著作権上の理由により曲を収録しておりませんでしたが、近く掲載いたします。


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[ 注 記 ]

<著作権について>

作詞者 村山 元氏は大正10年 [1921年] 大阪高商本科卒。昭和63年 [1988年] 9月に逝去されています。在学中は弓道部の幹事を務められたようです。

この歌の収録されている 『大阪高商歌集 第一輯』 には、村山氏が卒業に際して在学生のために作成した旨の献辞が付されています。今や忘れ去られた、村山氏自身の作詞による歌も数曲収められています。

作曲者 弘田 龍太郎氏 (明治25年 [1892年] 生 - 昭和27年 [1952年] 没) は戦前の日本を代表する作曲家の一人でした。主な作品に、『叱られて』・『靴が鳴る』・『浜千鳥』 など。校歌の作品も多数あり。著作権は 平成14年 [2002年] 末で消滅しました。

詞の方の著作権は存続しています。JASRAC 管理楽曲ではないため掲載しましたが、問題がある場合は投稿フォーム よりご意見ください。直ちに掲載中止いたします。

Entaro NAGATANI, 1996-2006.
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